2026年8月6日

Superposed Recurrence Plotの紹介

映像や舞台表現の訴求力を数値化する夢の技術とは!?

共通入力のダイナミクスを複数の観客の振る舞いに残された痕跡から復元する

この文章についての問い合わせはこちら↗︎

■理論的背景

 私たちが実験や観察で得られるのは,高々1変数の時系列データであることが多い.だが,力学系から出力された時系列データには,他の変数を含めた時間発展の履歴が残されている.この特徴を利用して,1変数の背景にあるダイナミクスの可視化としてのRP(recurrence plot, RP)を拡張し,複数の力学系に一斉に与えられた共通入力を再構成する手法が発展してきた.ここではその手法を紹介する.なお,ここでは用語の混同を避けるため,時間遅れ座標系を用いて状態空間を作成することを再配置(remap)と呼び,未知の共通入力を複数のRPから復元することを再構成(reconstruction)と呼ぶ.
 Casdagli (1997) は,別の力学系から入力を受ける力学系の応答(出力された時系列)を用いてRPを作成すると,そのRPには入力となった力学系のダイナミクスも保存されていることを示した.この発見を定式化したStark (1999) は,埋め込み定理(Takens, 1981)を拡張し,強制入力が与えられた場合にも,時間遅れ座標を用いれば,外部入力の影響を含む状態空間を再配置できることを示した.理論上は,入力系が滑らかに変化する決定論的な系であり,短い周期運動が特殊な縮退を起こさず,十分な長さの履歴を用いることが再配置の条件となる.

■Superposed Recurrence Plot

 Hirata et al. (2008) は,Starkの理論を実データに応用できる再構成手法を提案した.この手法ではまず,共通入力を受ける(わずかに個体差のある)複数の力学系の応答(すなわち,出力された時系列)からそれぞれRPを作成する.このRP上の点は,共通入力の状態どうしが近い時点であり,かつ個別の力学系の状態どうしも近い時点の組を表す.それゆえ,それぞれのRPに含まれる点は,共通入力のRPの一部を構成すると考えられる.そこで,複数のRPのいずれか一つ以上に点がある場合に点を残すRPを定義した.これがNomura et al. (2022) の用語でいうsuperposed recurrence plot (SRP)である.こうして作成したSRPについて,入力となる力学系のダイナミクスとそれを受ける力学系のダイナミクスでは時間スケールが異なり,とくに応答系の方が速く変化することを踏まえて粗視化する.その後,SRP上の状態間の距離を定量するために,RP上の点が他のどの点と似ているかを近傍集合の構成要素の多さで表して距離を求める.こうして作成した重み付きグラフ上の最短経路から距離行列を作成し,その距離行列に対して古典的多次元尺度構成法を適用し,時系列上に布置することで共通入力を再構成できる.ここでは,共通あくまで入力は未知であり,出力の情報のみを利用して再構成している点に注意されたい.
 Nomura et al. (2022) は,この手法を点過程に応用し,その性能を検証した.点過程を一定の時間窓で区切り,その範囲内のイベント数を数えて発火率時系列を作成し,Hirata et al. (2008) の手法に適用した.具体的な検証には,ダイナミクスがよく知られ,パラメータを変更することで多様な発火パターンを再現できるIzhikevichニューロンモデルを用いた.その結果,発火率の上がり下がりを適切に反映できる時間窓幅を設定すれば,最小で5%程度の誤差で共通入力の変動を再構成できることを示した. 

■人の行動データから共通入力を再構成する

 観客や視聴者からしばしば観察される点過程のデータとして,心拍や瞬目や笑いの開始時刻など,種々のイベント系列が挙げられる.時間窓を設定してこれらのイベントを計数し,共通入力によらない個人内の変動がそれほど大きくないと仮定すれば,Nomura et al. (2022) の再構成手法が適用できる.例えば,木村・野村(2022)は,音楽聴取者1名が2曲を23回聴取した際の心拍間隔から,音楽が聴取者の心を動かす力の変動を共通入力として再構成した.再構成された入力の時系列は,サビで強く,前奏・間奏・後奏で弱くなる傾向を示した.このことは,SRPを用いることで心拍の情報だけから音楽的構造に対応した共通入力を再構成できることを意味している.音楽が引き起こすゆるやかな再現性を示唆するこの結果は,音楽によって心拍が同期する現象(music-induced heart-rate synchrony, Nomura, 2024)が共通入力同期として捉えられることを意味する.心拍数の相関は,個人間よりも個人内で高い値を示すが(Nomura, 2024),これは共通入力を受ける認知システムのパラメータが近いほど類似しやすいことを示唆する.共通入力が印加されて生じる状態変化という観点からは,「ある人が繰り返し鑑賞して似た体験をする現象」と「同じパフォーマンスを鑑賞して多くの観客が一斉に心を動かす現象」は,同じメカニズムで生じていると考えられる.
 SRPはその後,Gilpin (2025) によって批判的に継承されている.Gilpin (2025) の手法は,基本的な再構成の方針を引き継ぎつつも,SRPの代わりに各応答系列の近傍構造から局所的に適応した類似度行列を作成し,それらを統合したコンセンサスグラフから共通入力のダイナミクスを再構成するものである.固定したRPの閾値の設定が容易ではないデータにも対応しやすい点に特徴があるという(Gilpin, 2025).
 これらの手法で再構成された共通入力は,時間窓に対応した時系列データとして得られる.このため,観客や視聴者に共通して与えられるパフォーマンスのどの要素が共通入力に大きく寄与するのかを例えば秒オーダーで検討するのにも利用できる.

引用文献

  1. Casdagli, M. C. (1997). Recurrence plots revisited. Physica D: Nonlinear Phenomena, 108(1–2), 12–44. https://doi.org/10.1016/S0167-2789(97)82003-9
  2. Gilpin, W. (2025). Recurrences reveal shared causal drivers of complex time series. Physical Review X, 15(1), 011005. https://doi.org/10.1103/PhysRevX.15.011005
  3. Hirata, Y., Horai, S., & Aihara, K. (2008). Reproduction of distance matrices and original time series from recurrence plots and their applications. The European Physical Journal Special Topics, 164(1), 13–22. https://doi.org/10.1140/epjst/e2008-00830-8
  4. 木村真実・野村亮太 (2022) 人の心を動かす音楽の力の再構成 第84回全国大会講演論文集 2022 (1), 531–532.
  5. Nomura, R. (2024). Reliability for music-induced heart rate synchronization. Scientific Reports, 14(1), 12200. https://doi.org/10.1038/s41598-024-62994-0
  6. Nomura, R., Fujiwara, K., & Ikeguchi, T. (2022). Superposed recurrence plots for reconstructing a common input applied to neurons. Physical Review E, 106(3), 034205. https://doi.org/10.1103/PhysRevE.106.034205
  7. Stark, J. (1999). Delay embeddings for forced systems. I. Deterministic forcing. Journal of Nonlinear Science, 9(3), 255–332. https://doi.org/10.1007/s003329900072
  8. Takens, F. (1981). Detecting strange attractors in turbulence. In D. A. Rand & L.-S. Young (Eds.), Dynamical systems and turbulence, Warwick 1980 (Lecture Notes in Mathematics, Vol. 898, pp. 366–381). Springer. https://doi.org/10.1007/BFb0091924


今後の発表予定2026

【書籍】
[準備中]
1. 野村亮太 (in prep.). ユーモア生成理論.[完成度70%]

【論文】
[投稿中]
1. Nomura, R. and Wang, S.(accepted)Vectorial synchrony: A method for quantifying directional alignment of audience movements using three-axis acceleration data. MethodX, 17, 104184.  new
2. Nomura, R. et al.  (under peer review) AffectLogger (仮) 
3. Nomura, R.  (submitted).  A Process Theory of Humor Magnitude (仮) 
4. ...野村亮太他 (submitted) Superposed Recurrence Plotによる共通入力の再構成
[準備中]
1. Nomura, R. et al. Dynamics of laughter in theatre.
2. G., M., W., S., and 野村亮太 (revised). ショットスケールの効果(仮)
3. M., M., ...野村亮太 (revised).  映画での感動1(仮)

【国際学会】
1. Nomura, R. (accepted). A Synchrony Index for Multidimensional Accelerometer Time Series: Application to Collective Audience Arm-Swing Behavior. NOLTA2026. 
2. Itoh, Y. and Nomura, R. (accepted). Collective Gaze Dispersion and Directional Discrepancy Predict View Counts of Regional Promotional Videos. NOLTA2026. 
3.  Nomura, R. (accepted).  A group-level index of head-movement synchrony during music listening. APSCOM2026.
4. Kurosaki, M. and Nomura, R. (accepted).  Factors determining psychological closeness during live music concerts. APSCOM2026.
5. Nomura, R. (invited). Laughter in manzai theatre. International Symposium on Research in Japanese Performing Arts. Cork, Ireland, February 2027.
6. W, Y. and Nomura, R. (invited). Kumadori makeup and inpression(仮) International Symposium on Research in Japanese Performing Arts. Cork, Ireland, February 2027.

【国内学会】
1. 野村亮太 (2026) 隣の客はよく点似る客か? お笑い賞レース観客評価にみる空間相関 日本笑い学会第33回大会

【フィールド実験】
1. 吉本興業×早稲田大学 漫才の実験 大宮ラクーンよしもと劇場 (2026.6.29)
2. 第六回実験寄席 アイルランド公演 (2027.2.予定)



2026年7月8日

20260626科研費採択日記

先日,科研費挑戦的研究(萌芽)の採択が内定しました.

研究課題名は「人の相互作用の向きと強さを同定する時系列データ解析基盤の構築」で,2026年から2028年3月までです.

この研究の枠組みで,2027年2月にアイルランドで落語の実験を行うことにしました.現在鋭意準備中です.

丁寧にデータをとって日愛比較などをしたいと思います.


2026年5月3日

20260503ユーモア理論日記

書籍を書く依頼があり,ユーモア理論について改めて考えている.

主要な概念を説明しうる以下の論文を読み直し中.

McGraw, A. P., & Warren, C. (2010). Benign violations: Making immoral behavior funny. Psychological Science, 21(8), 1141–1149.

この論者のポイントは,benign violationの認知判断(appraisal)が重要だということ.Nerhardtのおもりの実験のような単純な予期からのズレとか,二つの(異なるドメインの)言葉が音韻的類似性で関連づけられて並置されること(pun)のような要素があるだけではなく,それと同時にbenignであるという評価がbenign violationこそがユーモアの条件であるとする.


なお,この論文の最後の方に,理論をどこまで拡張できるかの議論の中で

Slapstick is less funny if it seems too real or if the viewer feels empathy for the victim.(p.1147)

という記述があった.ドタバタ喜劇の棒が柔らかいことやハリセンが無駄に大きく,リアルではない様子を示すところに,観客を心配にさせずにbenign violationを成立させる工夫があるのかなとも考えた.


関連して,音韻に基づく駄洒落は面白くないと評価されることが多いけど,この理論に基けば,(論文に書いているわけではないが)もっと社会的規範や倫理規範の違反をするもの(かつ,この表現形式であれば許容されるもの)であれば,おもしろさが増すのかなとも考えた.





2026年4月15日

20260415日本笑い学会,高校生対象研究発表募集

次回の笑い学会は2026年9月26日,27日にあるとのことです.

最近では高校で探究活動が盛んに行われています.そのなかで笑いについて扱うケースも多いようです.

こうした状況を踏まえて,日本笑い学会では,高校生が発表する場を設けることが公式に発表されました.8月10日まで受け付けているようなので,探究で笑いを扱った高校生はぜひ発表してみてください.

https://www.nwgk.jp/event/img/Guidelines_HS_2026.pdf


2025年12月24日

20251223親父ギャグ日記

 ユーモアについて調べていたら,いわゆる「親父ギャグ」というのは英語圏でも"dad jokes"ということを知った.

おじさんが音韻的な重なりに気づくと,思わず言ってしまうのは世界共通なのか.それには,実行機能の低下が関係しているのだろうか.

その研究[1]では,いわゆるdad jokesをaka ‘groan-worthy’ jokesつまり,「(おもしろくなさすぎて)うなりを上げてしまうようなネタ」と述べていました.

[1] Cai, Q., Chen, S., White, S. J., & Scott, S. K. (2019). Modulation of humor ratings of bad jokes by other people’s laughter. Current Biology, 29(14), R677–R678.

2025年4月4日

20250404暖かくなった日記

 昨日までの厳しい寒さが和らぎ,暖かくなった.快晴でもあった.

こうなると,世の中の結構な割合の人が一斉に陽気な心持ちになる.これも一種の共通入力同期だ.

日本列島の広い範囲で同時に笑顔が増えたのではないか.もちろん,これにはあてはまらない人はいるのだけど,互いに影響を与え合っていなくても,一斉に類似した心理状態になったのだ.

Moran効果は動植物の同期を説明するが,人間に対しても気温が持つ影響力は大きい.




2024年5月23日

同日開催!2024年5月27日(月) 早稲田大学落語入門 & 第五回実験寄席【実験参加で入場無料!】


落語を鑑賞しているときに,人間はどのような反応をしているのか? その解明のために,生理指標や表情を計測しながら落語を鑑賞する実験を行います。参加者には通常通り落語を楽しんでいただきます。

(1)研究内容と実験方法の説明を受け,計測機器を装着します(15分)

(2)2名の噺家による落語を鑑賞します(75分)

(3)落語鑑賞時の体験に関する質問票に回答します(5分)

表情と笑い声を計測するために顔映像と音声を収録します。また、一部のお客様の心拍・身体運動・体表温度を計測します。なお、本実験の公演は「花魁」および「饅頭」に関する噺を含みます。

(日時) 

1.早稲田大学落語入門 (落語の鑑賞回数が10回未満の方が対象) 

  2024年5月27日(月)  16:00—17:30

2.第五回実験寄席 (落語の鑑賞回数が10回以上の方が対象) 

  2024年5月27日(月)  19:00—20:30

【お願い】実験機器の都合により、遅れての入場はできません。遅刻の場合には、申し訳ありませんが入場をお断りすることがあります。あしからずご了承ください。

(条件)参加者は入場料(2500円相当)が無料(交通費は支給なし)

(場所)早稲田大学早稲田キャンパス 早稲田小劇場どらま館(東京都新宿区戸塚町1丁目)

(募集人数)  【要予約】各公演50名 


(募集条件)

以下の全てを満たすかた

◉ 母語が日本語のかた

◉ 18歳から70歳のかた

◉ 視力・聴力に関して日常生活に支障をきたす問題がないかた

◉ 実験時の動画撮影への協力に同意がいただけるかた(実験の分析の範囲のみで使用します)


(応募方法) 

(1)以下のURLをコピーしてブラウザに貼り付けて検索し、予約フォームからご予約ださい。自由席ですが、実験の都合でデータ計測用の座席にご案内することがあります。

  早稲田大学落語入門:https://www.quartet-online.net/ticket/nyumon01

  第五回実験寄席:https://www.quartet-online.net/ticket/jikkenyose05

注)システム上、「当日精算」と表示されますが、支払いは不要です。また、Gmailなどの一部のメールでは、自動返信が届かないことがあります。自動返信がなく予約されたか心配な方は、下記の問い合わせ先にご連絡ください。


(2)何らかの理由で予約サイトへの入力や予約ができない場合は、下記メールアドレスからお問合せください。

nomuraryota[at]waseda.jp([at]を@に変更)

メールの件名は,ご自身の落語鑑賞回数に応じて10回未満の場合には「早稲田大学落語入門・参加希望」,10回以上の場合には「第五回実験寄席・参加希望」として,本文に①所属・学年,②氏名を記入の上,お送りください。


(特記事項) 

この研究への参加の有無が学業成績や単位取得に影響を与えることは一切ありません。


2024年2月29日

20240229基盤研究(B)採択日記

野村を研究代表者とする基盤研究(B)「フィールド・センシングによる集合的感情創発メカニズムの解明」が採択されました. 2024年度〜2027年度の4年間です.

今回の科研では,強力な分担者に入っていただき,そのおかげもあって採択となりました.2024年4月以降の実施ですが,最初の落語会は2024年5月に実施予定です.

今後は,この枠組みでフィールド(劇場)でのデータ取得を進めていくことになります.2020年1月1日に立ち上げた新たな学問 Live-science(ライブ・パフォーマンスの科学)もようやく具体的な形が見えてきました.


この研究課題は,タイトルにある通り集合的感情を対象にしています.

多くの人が一斉に笑ったり泣いたりするのは,劇場ではごく当たり前のことですが,人はそれぞれ違うのですから,よくよく考えると不思議な現象です.そのメカニズムを明らかにすると言うのがこの研究課題の主眼となります.

どちらかといえば文系の学問である劇場研究を,非線形力学系理論やネットワーク論の解析手法を使う定量的なものへと転換することになります.

このブログも少し停滞気味でしたが,こちらでも色々と情報を発信できるように進めていきます!


2024年2月27日

20240226研究アイデア日記

 次の科研での分析に関して色々と調べていたところ,これまでずっと求めてきたものがあることがわかった.

2021年に論文になったもので,オリジナルは数理生態学におけるデータ分析の手法だ.とはいえ,前提条件に共通するところも多いので,私のデータにもそのまま当てはめることができそう.


夜のテンションで言いすぎているかもしれないが,大きなヒントを得た.

これまで8年くらい続けてきた,規模の大きな仕事の集大成となる研究のアイデアがその瞬間に閃いた.うまくいけば,これはおもしろい研究になる.


誰か研究者と飲みに行って,このアイデアについて話がしてみたい.


2024年2月1日

20240201投稿論文日記

 昨年の11月に投稿した論文のこと.

査読者の依頼には時間がかかっていたようだ.それでも2名の査読者が引き受けてくれた.ありがたい.

電子投稿システムを見てみると,12月の休暇前には1名から査読結果が届いていた.それから1ヶ月以上,もう一人からの査読結果が届かないので,1月30日にメールで問い合わせ.

急に状況は動いて,今日もう一人からの査読結果が届いたとのこと.


良い知らせなら良いのだけど.


20240204追記

この記事を書いた翌日,エディタから連絡があった.総合すると,minor rivisionの判断だった.これは朗報.一部プログラムを新たに書いて計算する必要があるものの,見通しが立つレベルだったので嬉しい.




2024年1月24日

20240124認知・体験過程研究 復刊日記

2023年12月25日に認知・体験過程研究の第10巻が発行されました.下記のページの「論文」メニューに新しい論文が掲載されています.

http://assoc-jcpe.w.waseda.jp/

2001年以降,休刊になっていましたが,このたびオンライン・ジャーナルとしてISSNも付与され,新たなスタートを切ることができました.


認知・体験過程研究では,教育心理学や社会心理学といった心理学における諸領域の研究に加えて,発達科学,認知科学,情報科学など幅広いジャンルの研究を査読の上,掲載します.

関連分野の方はぜひ投稿してください!









2023年5月20日

20230520ザセカンド

 実におもしろい。

ネタ自体というより、お客さんのリアクション、探究してみます。

2023年3月9日

20230309シアトル滞在日記

 英語を使った授業に関する研修でシアトルに来ています.

2週間の研修も終盤に差し掛かり,気が付けば残りあと3日ほど.

ワシントン大学周辺の地理には少し詳しくなりました.


ホテル暮らしで基本的には快適なのですが,それでも物価高だったり,治安の面でも気になることがあって,日本がいかに暮らしやすかったのかを改めて実感しました.




2022年11月18日

20221118FIFO大事日記と雑感

 昼から別のキャンパスでの打ち合わせに参加するために移動中.

時間調整のために入ったカフェで,どんどん後の人の注文が出されていく.

私はアイスコーヒーだけなのに,なかなか出てこなかった.


よくみたら,会計をした後でトレイをテーブルに置かれる順番がばらばら.

私のトレイはレーンの最後に置かれていて,何度もスルーされていました.かなしい.

First In First Outの方式になっていないのは,順番で並んでいる場合にはやはり気になる.


昨今の状況に関しても色々と変化があって,来年の学会発表は,海外にも行けそうだ.

どの学会に行くか検討中.どの分野もオンサイトの予定が増えてきた.

非線形関係で7月にカナリア諸島か,あるいは,認知科学関係で7月にシドニーか.




2022年9月13日

20220912PRE論文掲載日記

先日も少し言及した,下記の論文が2022年9月12日に無事掲載されました.


Nomura, R., Fujiwara, K., & Ikeguchi, T. (2022). Superposed recurrence plots for reconstructing a common input applied to neurons. Physical Review E, 106:034205.


URL: https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevE.106.034205

DOI: 10.1103/PhysRevE.106.034205


観察者にとって未知の共通入力を,互いに独立した神経細胞(ニューロン)群に印加し,その出力の情報のみを用いて,共通入力の振幅を再構成するというものです.

Izhikevichニューロンモデルのパラメータを変えることで実現したChattering,Regular Spiking,Fast Spikingニューロンを用いて検討したところ,いずれも誤差が10%未満の比較的高い精度で共通入力を再構成できることを確認できました.

また,カオス応答を示すニューロンを用いた場合にも,再構成の精度は低下するものの,ピークの位置は正確に再構成が可能であることを示しました.

この研究の意義については,こちらの英文記事でわかりやすく紹介されています.ぜひご覧ください.


2018年ごろに開始し,基礎的な内容の積み重ねでここまで到達することができました.それが物理学の有力誌に掲載されたのは,本当に嬉しく思います.

また,この再構成手法は,システムの詳細ではなく出力の情報のみを用いているため,さまざまな非線形システムに適用できると考えられます.

噺家の熟達化の研究にもどんどん使っていきます.


2022年8月5日

20220722Physical Review E採択日記

物理学系の専門誌として有名なPhysical Review Eに,論文の掲載が決まりました!

これは,東京理科大学で博士後期課程を通して行っていた仕事です.自分の中でもとても重要な位置づけの内容なので,掲載が決まって,非常に嬉しいです.

具体的な内容については,出版された時に改めて触れるとして,ここでは雑感を.


第一著者として物理系の雑誌に採択されるというのは,これまでに経験したことがありませんでした.

34歳で大学院に改めて進学することにしたのですが,その時には,このような日が来るとは全く想像できませんでした.


この雑誌の前に,いくつかの雑誌に投稿してはエディタキックをくらい,可能性があるのかわからなくなっていました.

結果として,雑誌のスコープとうまく合っているというのが重要だったということを示していると思います.

専門誌に受け付けてもらえたことは,外の世界にも認められたような気がして,自信になりました.

認知科学系への内容もにらみつつ,非線形界隈のことも息を長く続けていければと思っています.


実際,今回の論文の提案手法は,劇場認知科学にとっても有益です.

これまで何度も扱ってきた,観客の瞬目に対してもそのまま適用できます.

というか,こうした分野に適用できるように,手法を考えてきたというのがより正確です.


この話は,五代目小さんの「にらみ返し」を説明するというところから始まったのでした.

いま「セリフなき間に観客が充填する意味」に指数関数的に接近したようです.

心理学では,物理量と知覚する量に違いがある時,それを錯覚と言います.

物理量と体験する量に違いがある場合にも,名前が必要でしょう.



シンプルな実験をたくさんするのが良さそうだと思えてきました.

引き続き進めていきます.




2022年6月24日

20220624論文再投稿日記

さきほど,修正に時間がかかっていた論文を再投稿しました.


春学期はかなりタイトなスケジュールで,まとまった時間がとれないなか,なんとか再投稿まで漕ぎ着けました.

ここ数年のまとめとなる仕事なので,採択までなんとか進みたいところです.

いくつかの具体的な場面に適用できる理論的枠組みを提供するものですので,ライブ・パフォーマンスの科学に新たな切り口が加わると考えています.


それから,最近の話題をいくつか.

大学院のゼミでは,以下の本を読み始めました.

Reason, M., Conner, L., Johanson, K., & Walmsley, B. (Eds.). (2022). Routledge Companion to Audiences and the Performing Arts. Routledge.

2022年4月に発売になったもので,かなり関心が近いことがわかりました.

意外なことに観客について注目した研究はそれほど多くないのですが,これは現時点での研究をおおむねカバーしていると思われます.


また,最近読んで面白かった論文

Mori, F., & Kori, H. (2022). Noninvasive inference methods for interaction and noise intensities of coupled oscillators using only spike time data. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(6), e2113620119.

蔵本モデルなどを念頭に置き,神経発火などの点過程のデータのみから,その背景にあるシステムの結合強度を推定する方法の提案です.

出力がすでにある程度まで同期が成立している状態を前提にしているものの,内部状態値に触れることなく推定するというのがポイントです.

この数理的な方法を非侵襲という枠組みで説明したのは非常に巧みだと思いました.




2022年5月7日

20220507オンライン超個体という発想

 私たちの研究室では新しい研究プロジェクトを立ち上げました.

ここに「オンライン超個体」という構想を初めて公に述べます.

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新型コロナウィルス感染症の世界的流行により,エンターテイメント,ビジネス,教育など,多様なジャンルでオンライン配信が急増している.その一方で,ライブ・パフォーマンスで感じられる演者や他の観客と時空間を共有しているという認識を伴う快の感覚としてのライブ感は,オンライン配信では大幅に損なわれることが問題となっている.既存技術では,視聴者がリアクションを示すために感想を入力する必要があり,鑑賞が阻害され,オンラインイベントにおける十全なライブ感の創出は未解決の課題として残されている.

本プロジェクトでは,新たなアプローチからオンラインイベントでのライブ感の創出を行う.そのためにまず,視聴者の群行動に集団としての特性が創発し,決定論的な規則性が生じている状態を「オンライン超個体」と定義し,その挙動の予測と制御を目指す.すなわち,ここでのオンライン超個体とは,オンラインイベントの多数の視聴者が,演者からの入力および視聴者間の相互作用を通して,1個の生物体であるかのように振る舞うようになった人間集団である.

多数の視聴者がそれぞれ自由に振る舞う場合には,視聴者群は個人特性の集積として確率・統計的に特徴づけられるため,制御することは容易ではない.それに対してオンライン超個体は,集団レベルの特性により特徴付けられ,かつ,その行動には決定論的な規則性がある.それゆえ,数理モデルによりその挙動を記述することができれば,視聴者が示す群行動の予測や制御が可能になると期待される.本プロジェクトでは,種々の方法でオンライン超個体を創出することで,他の視聴者の存在を感じる新たなライブ感を生み出す.

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「オンライン超個体」の測定,予測,制御については,具体的なアイデアがありますので,これからどんどん進めていきます.

2022年2月8日

20220208視線分析プログラム完成日記

 以前から外注していた視線分析用のプログラムが完成しました.

このほど,納品されるということです.


この解析手法は,先行研究で使われていて,かなり使えそうなものです.

アルゴリズムはシンプルですが,構造がやや複雑で自分で実装するには手間がかかりすぎるものでした.

年度内に完成して本当に嬉しい.

これで,次期4年生や3年生で,視線計測を行う場合に分析の幅が広がります.

野村研究室で使っている手法と併せて,視線データを用いた映像作品への反応を取り扱った研究基盤を着実に固めていきます!


研究対象に新奇性が高いことが多いので,分析手法はできるだけ手堅く進める,というのを最近は意識して進めています.

劇場認知科学という分野を少しずつ固めていくために,知見を積み重ねていきます.



Superposed Recurrence Plotの紹介

映像や舞台表現の訴求力を数値化する夢の技術とは!? 共通入力のダイナミクスを複数の観客の振る舞いに残された痕跡から復元する この文章についての問い合わせは こちら↗︎ ■理論的背景  私たちが実験や観察で得られるのは,高々1変数の時系列データであることが多い.だが,力学系から出力...