書籍を書く依頼があり,ユーモア理論について改めて考えている.
主要な概念を説明しうる以下の論文を読み直し中.
McGraw, A. P., & Warren, C. (2010). Benign violations: Making immoral behavior funny. Psychological Science, 21(8), 1141–1149.
この論者のポイントは,benign violationの認知判断(appraisal)が重要だということ.Nerhardtのおもりの実験のような単純な予期からのズレとか,二つの(異なるドメインの)言葉が音韻的類似性で関連づけられて並置されること(pun)のような要素があるだけではなく,それと同時にbenignであるという評価がbenign violationこそがユーモアの条件であるとする.
なお,この論文の最後の方に,理論をどこまで拡張できるかの議論の中で
Slapstick is less funny if it seems too real or if the viewer feels empathy for the victim.(p.1147)
という記述があった.ドタバタ喜劇の棒が柔らかいことやハリセンが無駄に大きく,リアルではない様子を示すところに,観客を心配にさせずにbenign violationを成立させる工夫があるのかなとも考えた.
関連して,音韻に基づく駄洒落は面白くないと評価されることが多いけど,この理論に基けば,(論文に書いているわけではないが)もっと社会的規範や倫理規範の違反をするもの(かつ,この表現形式であれば許容されるもの)であれば,おもしろさが増すのかなとも考えた.
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