2021年8月19日付で,Nature Communicationsに下記の論文が掲載されました.
Moritz, S., Gottschick, C., Horn, J., Popp, M., Langer, S., Klee, B., ... & Mikolajczyk, R. (2021). The risk of indoor sports and culture events for the transmission of COVID-19. Nature Communications, 12(1), 1-9.
この論文は,2020年8月に実験的に行われたポップスの着席コンサートのデータを基にしています.
この実験では,首にかけるセンサーにより参加者間の接触情報(コンタクトデータ)を次の3つの条件で取得しています.
一つ目の条件は,衛生対策を取らなかった場合.二つ目の条件は,参加者の座席の前後左右を空席にして,入り口を2倍に増やした場合,三つ目の条件は,実験参加者(観客)の座席の間隔を1.5mとして入り口を4倍に増やした場合.
屋内でのエアロゾルの移動について,空気交換率をパラメータとして持つ数理モデルを構築し,上記の条件により感染パターンがどのように異なるかをシミュレーションしています.
結果を簡単に要約すると,空気交換率が高く,かつ,1.5mの間隔を取る最も厳しい条件では,感染のリスクが日常生活でのリスクと変わりないくらい低くなりました.
著者らは,これらの条件が満たされれば,屋内の着席コンサートが広域の感染に寄与するリスクは十分低いと考察しています.なお,席の移動を伴うライブ等については,あてはまらない場合があることに注意すべきだということも述べています.
変異株の影響もあり,これを今日にそのまま一般化することはできないかもしれません.しかし,データを取った検証が,どのような行動なら十分リスクを下げられるかについて根拠を与えるのだという意味で,勇気を与えてくれる研究だと感じました.
0 件のコメント:
コメントを投稿