早稲田大学人間科学部で4月から開講されている『劇場認知科学』を担当しています。
この授業では、毎回授業内容に対する質問を書いてもらっています。質問への回答も毎回返しています。
新たに学んだ内容を基に質問を考えるというのは、学生自身に現時点の思考の水準を反映した考えを言語化してもらう方法です。
この質問に対して教員が回答するのは、”他者の支援を受けて初めて考えることができる領域”での思考を促するものです。
理論的には、ヴィゴツキーが示した発達最近接領域の考えを念頭に置き、この学習概念を実践する教授学習デザインです。
学生の認識論を変えていく方法としても有効であると考え、私が非常勤で教えていた時から続けています。
野村亮太・丸野俊一. (2017). 質問と回答を取り入れた授業による認識的信念の変容. 教育心理学研究, 65(1), 145-159.
とはいえ、今期は190名近い学生が受講しているので、一人の質問に1分で回答しても3時間10分かかる。2分をかけたら6時間以上。。。
あの長い『タイタニック』が見られる時間をかけて、1週間で回答します。
時間の負担はあるけれど、私が考えさせられるおもしろい質問もあって、やはり続けていきたいと思います。
そんな授業もいよいよ再来週までとなり、前期もなんとか乗り切れそうなめどが立ってきました。
これだけ頑張って初めての授業内容を全15回準備して、学生の質問に対して回答を書いてきました。
かなりタフな仕事だったので、この成果をまとめた『劇場認知科学入門』とでも名前を付けた本でも出したいくらいです。
自分自身のことと言うよりも、これまでにない学問分野に相対した学生たちの思考の痕跡を残しておきたいという気持ちでもあります。
ともかく、前期の終わりが見えてきたというそういう日記でした。
2020年7月18日
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